運営会社 株式会社 八芳園
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「習わし」を見繕う
東京都港区高輪の新しい商業ビル「NEWoMan TAKANAWA LUFTBAUM」29Fに位置する『割烹 BUTAI』。日本の美意識を表現した店のしつらえを「演劇におけるセット」、料理を「演目」、料理人やサービススタッフを「演者」とし、そこに「お客さま=観客」を迎えて時間と空間を共有する場所、それが「BUTAI」です。
空間デザインは、400年以上の歴史を持つ日本庭園を有する八芳園が大切にしている日本の美意識と食文化への想いを圏外にも「こころのふるさと」を作るべく、⽇本の⽂化が⽣み出す「作法」や「躾」、伝承的に習慣化した空間の使い方や⾒⽅などから生まれる美意識を拠り所として『⽇本がもつ空間の「習わし」を⾒繕う』をコンセプトとしました。
空間は、舞台をモチーフとした扇形が特徴的な構成を用い、割烹の伝統的なカウンター文化と現代的な個室空間の魅力を融合させています。オープンキッチン形式を採用し客席を一段上げることで、どの席からも目の前で料理人の巧みな手捌きや繊細なパフォーマンスが見え、料理を味わうだけでなく食を五感で楽しめる設計としました。個室とオープンキッチンの組み合わせは、静謐なプライベート感と料理人との距離の近さが共存する独自の設えです。キッチンの先には、施設の最上階に広がる”東京”の街を舞台の借景とする事で、日本の食文化の新しい魅力を発見できる、食の体験空間を目指しました。
また、仕上げや調度品についてもこだわりを込めています。壁は日本の伝統塗壁である聚楽風の質感を左官職人が再現、扇状の廊下には路地の行燈を思わせる照明を配置。手に触れるカウンターやテーブルには国産の栗材を用いた一枚板を使用。店名や個室名のサインもその端材を流用し、木彫り職人の手により一つ一つ丁寧につくられました。
店内に流れる音は、八芳園の日本庭園をモチーフにオリジナルで制作。これらの空間体験が日本文化の美意識が息づく場として、日常から少し離れた特別な時間を静かに演出します。
伝統と現代、格式と親しみ、緊張感とくつろぎ。そのすべてが調和する空間で、訪れる人が日本の美しい食文化と真摯に向き合い、心に残る時間を過ごしていただけるように。その想いを空間デザインとして表現しています。